コラム「大河ドラマ『豊臣兄弟!』をより楽しむために」 第1回 登場人物たちの呼ばれ方
2025年12月15日
来年1月からスタートする大河ドラマ『豊臣兄弟!』をより楽しむため、織田信長や豊臣秀吉らが活躍した織豊期を専門とする堀越祐一教授のコラムが、今月から連載スタート。毎月1回、来年12月までを予定しています。ドラマの主人公は、秀吉を長くそばで支えた弟の秀長。時代背景や人物像、そして物語を一緒に楽しみましょう!
第1回 登場人物たちの呼ばれ方
いよいよ大河ドラマ「豊臣兄弟!」がはじまります。豊臣秀吉・秀長兄弟以外にも織田信長・徳川家康をはじめとして、歴史上の著名人が多数登場しますし、これまであまり大きく取り上げられることがなかった豊臣秀長が主人公というのも、楽しみなところです。
ところで、ドラマの中ではおそらく彼らは「信長様」とか「秀吉」・「家康殿」などと呼ばれることになると思いますが、実際にはそのような呼び方はされていませんでした。これらの名前は、実名(じつみょう)あるいは「諱」(いみな)と言います。「いみな」は「忌み名」に通じ、他人に呼ばれることを「忌む」という意味がありました。自分で名乗るのは構わないのですが、他人が呼ぶのはとても失礼なことだったのです。
では、実際にはどのように呼ばれていたのでしょうか。古文書から判断すると、秀吉兄弟は信長を「殿様」とか「上様」と呼んでいたと思われます。「信長様」などと呼んだら、信長の逆鱗に触れて大変なことになったはずです。
一方で信長は、秀吉を「藤吉郎」、秀長を「小一郎」と呼んでいたでしょう。これらは「通称」と言って、他人が呼んでも差し支えありませんでした。ですが、ドラマでそのような呼び方を用いてしまうと、誰が誰だかわからなくなって、視聴者は混乱してしまうかもしれません。そのため、これまでの大河ドラマのほとんどがそうであったように、今回の「豊臣兄弟!」でも「信長様」・「秀吉」というような呼び方がされると予想します。もし予想がはずれたらすみません<(_ _)>
