平成24年度入学式 学長告辞
12年04月12日(木) :
告 辞(要約)
学生諸君、進学おめでとう。國學院大學130年の伝統を受け継ぎ、地域の方々から高い評価をいただいている國學院大學北海道短期大学部の門をくぐっていただきました。数ある学校の中から、日本の心を大切にする本学に信頼をお寄せいただいたことに感謝申し上げます。
先ず、今年、130年の歴史を重ねた本学の母体である國學院大學について触れたいと思います。
明治の日本は、欧米の科学技術を導入して日本の近代化を急速に進めました。それは見事に成功して、私たちは繁栄を手にしました。しかし、江戸末期から明治にかけて日本を訪問した欧米の知識人たちの多くは、その著作の中で日本の急速な近代化に懸念を示していました。
そのいくつかを紹介しましょう。日本の近代登山の開拓者ウェストンは、「明日の日本が、今日の日本よりはるかに富んだ、おそらくある点ではより良い国になるのは確かなことだろう。しかし、昔のように素朴で絵のように美しい国になることは決してあるまい」と記しました。
日米修交通商条約を締結したことで知られる初代駐日公使ハリスは、「疑いもなく新しい時代が始まる。敢えて問う。日本の真の幸福になるだろうか」。
イギリスの詩人、アーノルドは、「景色は優美で、その美術は絶妙であり、魅力的な態度、礼儀正しさは、あらゆる他国より一段と高い地位にある」と語りました。
当時、訪れた多くの異邦人たちが、日本が近代化を進める過程で、日本人らしさがだんだん失われていくのを憂いていたのです。
後年、夏目漱石は、「近代日本の歴史は、文明を得て、文化を失った歴史である」と、指摘しています。イギリスの小説家、ラフカディオ・ハーン、つまり小泉八雲も日本人らしさが段々失われていくことを憂いています。
こうした中にあって、明治15年、國學院大學の前身である皇典講究所が創設されました。「日本人の本来の道、つまり、日本固有の優れた文化や国民性を探求し、あらためて認識して、私たちが品格ある日本人として、我が国と、広く世界の繁栄のために役立っていく日本を目指そう」、ということが、学校を創った基本の考え方だと私は理解しています。
これが「建学の精神」です。格調の高い宣言ですから、十分味わって欲しいと願っています。
國學院大學北海道短期大学部は、この建学の精神を継承して、國學院大學百周年にあたる昭和57年に開学しました。本学が開学した30年前は、大学や短大の新・増設が厳しく抑制されていた時代でした。その中で、地域のほとばしる情熱に支えられて開学したのが私たちの北海道短期大学部です。
この時、設置が認められたのは、「特別の必要性」を文部省が認めた、ごく限られた大学でした。時の文部大臣は、「地方自治体と私学と市民とが一致協力して設置した、大学立地の一つのモデルと考えている」と評した短大でもあります。共に誇りを持って勉学に励もうではありませんか。
この國學院大學北海道短期大学部で、皆さんは価値ある人生を送るための三つのスタート地点に立つことになります。
先ず、第一に、この大学は多くの仲間・友人、我が師との出会いの場、縁を結ぶ場だということです。
人は、一人では生きて行けません。助け合い、支えあって生活するように宿命づけられています。自らの人生の中で困難に出会った時に、いかに克服して明るい展望を拓けるのか。そのカギは、我が師にあり、我が友にあります。
人生においては、求めないことを偶然得られることはありません。自ら求めることが大切です。そうすれば皆さんは、必ず人生の師と生涯の友を得ることができるでしょう。
第二に、本学は、自己実現するためのスタート台となる場だと言えます。
人には、与えられた使命があります。そのために皆さんが定めた目標に向って、その目標は高きに置いて、今この時こそ進みたい道を着実に歩んで行こうではありませんか。
私たちには、そのための多様な道を、皆さんと共に考えてサポートしていく用意があります。
第三に、本学は、物事の本質を探究する場です。
教わったことを暗記するだけでは物事の本質・真理を探究することはできません。高校までの学習と異なり、物事を深く掘り下げて、自分なりの考えを持つことが大切です。易しい道ではないと思います。しかし、人間には、苦しいことや難しいことに面白さや喜びを感ずる素晴らしい能力があります。自らの能力を信じて、夢中になれることを見つけて、そのことを職業として生きていけるとすると、そんなに素晴らしい人生はありません。いい人生のスタートをこのキャンパスからきろうではありませんか。
本学が立地している滝川・中空知の地は、学業や研究に最もふさわしい環境が整っています。時には、博物館探訪、森林浴・パークゴルフなどのアウトドアライフでリフレッシュしたいものです。自然体験・農業体験も田園都市ならではの魅力ある体験になります。地域の人々との交流も、皆さんのコミュニケーション力を一層高めていくことになるでしょう。何事も、積極的に挑戦することを期待しています。
本年度は、本学開学30周年に当たります。印象に残る年にしたいと皆が張り切っています。将来にわたって安定した教育活動が行われるよう決意を新たにしております。
多くの学生諸君がお世話になります家主会の方々が、皆さんの学園ライフを支援して下さっています。全国でも稀な立派な組織です。滝川のお父さんお母さんと思って相談して下さい。親身に相談に乗ってくださいます。
ご家族の皆様、勉学のキャンパスは、この学校のエリアを越えて大きく広がっています。ご家族そろって足を運んでいただいて、滝川市・中空知に広がる魅力的なキャンパスライフをお子様とともに楽しんでいただければ幸いです。
平成24年4月10日
國學院大學北海道短期大学部
学 長 田 村 弘